BroadcomによるVMware買収について調べてみた

VMware

BroadcomによるVMware買収について調べてみた

既に多くの方が注目をしているBroadcom社によるVMware社の買収劇。

私もVMware製品に深く関わる業務をしているため、この動きについては注目せざるを得ないため、情報を集めてみることにしました。

極力、読者の方にもフラットに情報が伝わるように記述するよう努めます。
基本的には各所で取り上げられている本話題について、ソースとなる情報をまとめている、そんな記事だと思ってください。

Broadcom社によるVMware社の買収(第一報)

以下に挙げているように、主要なメディアで一斉に取り上げられています。

 

 

決まっている(っぽい)こと

以下の記述は、次のツイート内にある公式情報から抜粋したものです。

 

  • Broadcom社はVMware社の発行済みの株式を全て現金と株式で取得をする
  • Broadcom社のソフトウェア部門のブランド名を”VMware”とする
  • 既存のBroadcom社のソリューションが、何らかのVMware製品に組み込まれる

後述もしていますが、Broadcom社はエンタープライズ データセンター向けのソリューションを持つネットワーク主体の企業です。昨今では5GやEdgeなど、あらゆるものをネットワークに接続してはそこから得られたデータをビジネスに活用していこうというモデルがスタンダード化している中、エンタープライズインフラで多く採用されるVMware社の仮想化基盤と自社製品を統合することでよりユーザーを増やしたい意向があるように見えます。

ライセンスの取り扱いをサブスクリプション化するという内容

5月26日にメディアに出た記事の1つとして、”VMware製品の提供方式をサブスクリプション化する”というものがありました。メディアが掲載した原文記事をそのまま訳してみました。

原文翻訳版(機械翻訳と著者翻訳を併用)

Broadcom が 610 億ドルを投じて VMware の買収を完了した場合、同社は VMware の契約と顧客を永久ソフトウェア ライセンスからサブスクリプションおよび SaaS (Software-as-a-Service) に「迅速に移行」する予定であると述べています。

Broadcom のソフトウェア グループの社長である Tom Krause は、「私たちは、(VMware の)永久ライセンスから購読への「ソフトウェア ビジネスでは、100% の定期的な収益に完全に焦点を合わせています」と述べています。

Broadcom の CEO、Hock Tan は、今後数年間で VMware のオンプレミス ライセンス モデルをサブスクリプションに「変換」する予定であり、これにより VMware の収益成長が短期的に鈍化する可能性があると述べています。

「経済学の観点からは、永久ライセンスであろうとサブスクリプションであろうと、正直言って同じことです。しかし、私たちは、モデルの運営方法に非常に一貫性を持たせたいと考えています。このため、ある意味、永久契約からサブスクリプション契約へと契約を再構築しています」と、本日行われたメディアおよびアナリストとの電話会議でタン氏は述べました。「そのため、最初のうちは成長が鈍く、その後、サブスクリプションへの移行が進むにつれて、より急速な成長が見られると思います。

Broadcomは本日、VMwareを610億ドルという巨額で買収する計画を正式に発表し、IT史上最大の買収の1つとなりました。

この買収が完了すると、クラウスが率いる Broadcom のソフトウェア グループは、Broadcom 傘下で VMware として再ブランド化され、運営されることになります。新しいソフトウェア部門には、ブロードコムの既存のインフラおよびセキュリティ・ソフトウェア・ソリューションに加え、VMwareのポートフォリオが含まれることになります。

VMware はすでに、自社とその顧客を従来の企業向けソフトウェア・ライセンス契約から SaaS やサブスクリプションに移行させようと努めています。

実際、VMware が本日発表した第 1 四半期の決算では、サブスクリプションおよび SaaS の収益が前年同期比で 21% 増加し、約 9 億ドルに達しました。VMwareの第1四半期の総売上高30億9000万ドルのうち、サブスクリプションおよびSaaSは29%を占めています。

VMwareのサブスクリプションおよびSaaSの売上は、現在、年間31億4,000万ドルの経常収益を生み出しています。

VMwareのCEOであるRaghu Raghuramは、本日の声明の中で、「顧客が求める柔軟性と選択肢を提供するため、当社はサブスクリプションおよびSaaSポートフォリオの成長加速に注力しています」と述べています。

VMware と 10 年以上提携しているソリューション プロバイダのある経営幹部は、Broadcom が現在の顧客契約を直ちに中断させないことが、「VMware とそのチャネル パートナーの将来にとって重要である」と述べています。

「Broadcom が参入して、顧客との取引方法を直ちに変更することはできません。と、名前を伏せた経営幹部は述べています。「Broadcom が行っていることは理解できますし、長期的に見れば正しいことです。一部の顧客はサブスクリプションに早く移行していますが、まだ何年も残っている継続的なライセンスがたくさんあります。そのため、彼らが時間をかけて、当社のビジネスを中断させないようにすることが重要です」。

この役員は、Broadcom が VMware のチャネル パートナーを主導して、適切な時期に VMware の顧客を SaaS やサブスクリプションに移行させることを望んでいると述べています。「VMware は、もう何年も前から SaaS とサブスクリプション モデルを販売するように私たちに働きかけています。私たちはそれを知っています。私たちはそれを理解しています。一部の顧客は実行していますが、一部の顧客はまだ時間がかかっています。「私は、この(Broadcomの)アイデアが好きです。VMwareはすでにやっていた。Broadcomは私たちを助けてくれるかもしれませんが、それには時間がかかるでしょう。

Broadcom、VMware vSAN、vSphere、vRealize に投資へ

BroadcomによるVMwareの610億ドルでの買収は、すでに両社の取締役会で全会一致で承認されています。この買収は、Broadcom の現在の 2023 会計年度中に完了する予定です。

買収が完了したら、ブロードコムはVMwareの中核的な製品に資金を投入する予定だと述べています。

「研究開発の面では、コア ビジネス、コア フランチャイズに再投資するつもりです」と Broadcom の Krause 氏は述べています。「このビジネスの 3 つの柱について考えてみると、コア インフラストラクチャ ビジネスである vSAN、vSphere、vRealize は、収益の大部分をもたらす中核となるビジネスです。そして、そこに再投資が行われることになるのです。

著者が考えたこと

Broadcomについて

私が語るよりも既にまとまったサイトがあるので措置あrを見てもらった方が早い気がするので、リンクを載せます。ブロードコム – Wikipedia

x86サーバ経験がメインの私にとってみると、同社はNICベンダーのイメージが強いです。

同社が買収した主要な企業には、次のような企業があります。

  • Brocade (ファイバチャネルネットワーキング)
  • CA Technologies (エンタープライズ アプリケーション)
  • Symantec (セキュリティ)

※ 本記事を書きながら気が付いたのですが、CA Technologiesはバックアップソフトウェアでお馴染みの”Arcserve”は売却していたんですね。CAが「arcserve」事業を売却した理由、経営戦略を語る(2014) – Ascii.jp

実際に買収をした企業はまだほかにもありますが、特によく聞く名前のものを挙げてみました。

これらの会社名とBroadcomの専門領域という点を考えると、”ネットワークとセキュリティ”という用語が挙げられます。これは現在VMwareが力を入れている領域の一つと言え、今回のBroadcomとのタッグにおいて、更にその方面での強化は期待したいところではあります。

ただ、それに反して市場の反応はやや控えめな印象を受けます。

SNSなどの声を見るとおおよそ次のニュースあたりはその理由なんだろうと推察が出来ます。

上記のハイライト部には、”Brocade社のIPネットワーキング関連のビジネスについては売却をする”旨の記載があり、Brocade社のファイバチャネル部門のみを取り込むための買収だったのだろうという声が市場では大きいようです。なお、売却先は”Extreme Networks社”です。

ブロケードのイーサネット事業、Exterme Networksが買収へ。ブロードコムによるブロケード買収のあとで – Publickey

また、Symantec製品については買収後に”製品の値上げ”があった事実があり、以下の資料内にあるようにMicrosoft社ではSymantec Endpoint Protectionをはじめとする一連の製品からの移行を勧める記事も登場しています。

Symantec 製品ご利用中のお客様に捧げるMicrosoft セキュリティへの移行のススメ – Microsoft Security Forum 2020

私の身の回りでよく聞いた内容はこれら2つではありましたが、これまで買収された企業の製品やサービスについては、”様々な変更”があったことを受け、今回のVMware社の買収もそれらを彷彿とさせているのでしょう。

上述したもの以外ですと、こんな内容もあったようですがいまいちソースが見つけられず。

  • Symantec社が持っていた製品”Blue Coatの値上げとサポート期間の短縮化”
  • Brocadeが保有していた仮想ルーター “Vyatta” Core Editionの開発中止
    • Vyatta Core Editionの開発中止からVyOSの提供開始は2013年であり、BroadcomによるBrocade社買収は2016年なので時系列的に見れば、Broadcomの買収はVyatta Core Editionの開発中止とは関係ないような…

サブスクリプションモデルへの変更について

買収の発表から僅か2日で次の情報がおりてきました。

 

補足をしておきますと、そもそも今回の買収の話が出る以前にVMware単独としても”VMware Horizon”に関して言えばもうすでにサブスクリプション形式でのライセンスが登場しています。

この点を加味すればBroadcomの買収有無に関係なく、VMware単体としてもライセンスモデルの変更は時間の問題だったのかもしれないな、とやや思えます。

サブスクリプション ライセンスと Horizon Control Plane サービスでの VMware Horizon の有効化 – VMware Docs

VMware Horizonのライセンス – VMware IT価値創造塾

あと、VMware製品のライセンスは買い切り型と言えど、ライセンス自体に有効期限はあります。

有効期限を迎えた製品では、運用にかかわる動作に対して制限が入る仕組みになっているため、一度買えば永続的に使えるわけではありません。

どちらかというと、ユーザーにとっての不安要素はサブスクリプションモデル化すること自体というよりも、単純に値上げされる可能性だと言える。

なお、現行他のエンタープライズソフトウェアの提供形式でもサブスクリプションベースの企業は多くある。
例えばRed Hat社はその中でも老舗だと言える。

Red Hat サブスクリプションモデルに関する FAQ

Red Hat社の場合、製品へのパッチやアップデート、アップグレード提供、テクニカルサポート、技術リソースへのアクセスなどが含まれている。

現行のVMwareのライセンス提供では、単一のメジャーバージョンに対する実行権のみで、サポート契約はまた別となっている。例えば、vSphere 7のライセンスは、vSphere 6や将来登場するであろう8などに利用はできない。(現行のルールでは)

しかしながら、もし仮に新しい提供形式が特定バージョンに依存しない、としたら、その点についてはライセンスの買いなおし無しにアップデートに入ることはできると言える。

実際、あくまでも現時点ではサブスクリプション化については予定にしか過ぎないというため、深くここで語ってもしょうがないわけですが、単純な値上げだけで終わることはBroadcomもしないんじゃないかと、思います。(個人の感想)

ただ、ユーザー界隈ではひょっとすると”無償提供されているライセンス製品は無くなるのでは?”という声が散見されます。(本記事投稿時点では、そのような発表はありません)

もしそうなった場合、影響を受けそうな製品は次のようなものが挙げられます。

どちらも自宅に仮想化ラボ基盤を持とうとするエンジニアはよく使用している製品となります。

あれ、NSXは…?

上記のメディア原文をよく読むと”Broadcom、VMware vSAN、vSphere、vRealize に投資へ”との記載があり、NSXの名前がありませんでした。

もしやNSX廃止…?なんてことがよぎりましたが、どうやらもう1つ別のメディア側ではNSXの名前も投資対象として挙がっているようでした。まぁどちらかと言えばBroadcom社はネットワーク主体のビジネスなので、機能組み込みの対象としてはvSphereやNSXあたりが中心にはなるでしょう。

2022/06/03追記 Project Monterey

 

Project Montereyとは、物凄く簡単に言えば”Smart NICと呼ばれるNIC上で実行が可能なvSphere ESXi”だそうです。

Smart NICについては次のような記事がありますのでご覧ください。
「スマートNIC」とは何か? CPUの重い処理をNICが肩代わり – TechTarget Japan

Project Montereyは開発段階にあるため詳細は不明ですが、このプロジェクトの狙いは”パフォーマンス、可用性、セキュリティの向上”です。

プロジェクトの内容解説をしようかとも考えましたが、本記事の趣旨からずれてしまうのと、既存のブログでvExpert Jangari氏の記事が大変読みやすいのでそちらをご紹介させて頂きます。

VMware 社の新プロジェクト「Project Monterey」? – vSoliloquy

Broadcomって、このプロジェクトに参加してないんですよね。今回の買収の件を受けて参加するのかな?と考えたりした次第でした。

あとがき

取り合えず、集めてみた情報を見た限りでは明るい話の方はちょっと少な目かなというのが率直な感想ではあります。

とは言え、VMware社は市場でもユーザー数は大変多く、強引かつ大幅な変更は当然反発要因になるでしょう。Broadcom社の狙いとしては、やはりライセンスビジネスでの収益拡大であるならば、これまで行ってきた変更に伴う顧客の反応から学びはあっただろうと願うばかりです。

VMware社には私の知人も多く在籍していますので、そういう意味でもこの買収が結果的にユーザーや従業員、パートナーにとって価値があるものになってくれることを願いつつ、今後も見届けていこうと思います。

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