テクニカルサポートのためのVMworld 2021 Japan ダイジェスト

VMware

テクニカルサポートのためのVMworld 2021 Japan ダイジェスト

本記事の目的

本記事は、主にvSphere, vSAN, NSX周りに関係があるテクニカルサポートの方に向けた記事です。
本ブログ著者が、お客様のサポートに役立つだろうという理由でおすすめするセッションやスライドを抜粋しています。

VMworld Japanでは、そうしたトラブル対処以外にも先進的な機能をわかりやすく紹介したり、製品の利用事例を紹介する優れたセッションはありますが、あくまでも上記の目的に特化しているという点をご承知おきください。なお、本記事内で取り扱う各VMworld Japanのセッション資料取得と動画閲覧には、VMworld JapanのWebサイトログインが必要となります。アカウント作成が必須となりますので、こちらのURLからアクセスの上右上にあるメニューからアカウントを作成を行いましょう。

なお、ほとんどのセッション動画は2021年12月1日(水曜日)からの公開となりますのでご注意ください。
私が言わずともですが、いずれも素晴らしいセッションばかりです。

VMworld Japanとは

VMworld Japanとは、VMware様主催の年次イベントであり、VMware社やスポンサー様によるセミナーや宣伝ブースを伴うイベントです。

2019年以前は、vForum TokyoとvForum Osakaという形で国内2拠点での年次開催でしたが、昨今のコロナウィルスの影響もあり、対面イベントからオンラインイベントにシフトし、2020年と2021年ではオンラインイベントとして開催形式が変わりました。

オンラインイベント化されたことで、東京や大阪の方以外にも同様の参加チャンスが得られた事は、とても良い影響があったのではないかと思います。

VMworldとvForum

VMwareと長く付き合いのある方ですと、現在のVMworld JapanとグローバルのVMworldが同じ名称ですが異なるものであることはご存知だと思います。今回はグローバルとローカルのVMworldの違いについても少し解説を入れておこうと思います。

元々、VMware社のイベントの立て付けはこの様になっていました。

イベント名 開催規模 特徴
VMworld

グローバル

  • VMworld US(8月)
  • VMworld EMEA(11月)

VMwareが主催する最大級のイベント

VMware社による最新製品情報、ロードマップ、ストラテジーなどの発表などが期待される。

また数多くの技術セッション、ビジネスセッションやスポンサーブースなどがあり、まさに”仮想化の祭典”と言える。

vForum

(元VMworld Japan)

各国

  • vForum Japan
  • vForum Australia
  • vForum Singaporeなど

VMworldの内容を、各開催国のローカル事情に落とし込んで実施されるイベント

VMworldは特定地域フォーカスでは無い代わりに、開催国の技術トレンドなどをベースにセッションなども展開される。

上記でも解説をしていますが、現在はローカルイベントの呼称もVMworld Japanとなっていますが、コロナウィルスの影響によるオンラインイベント化してからイベント名称が刷新されています。

本記事内で取り扱う各種セッションについて

本記事投稿時点では、VMworld Japan 2021のWebページ上での殆どのセッションは資料のみのダウンロードが可能な状況です。開催日程が2021年11月25日、26日でしたが、この2日間以降は、VMware Japan様側で録画セッション公開をされてから両日のセッション動画が閲覧可能となりますのでご注意ください。

資料については上図の下部にあるように”資料ダウンロード”から先行してご入手を頂くことが可能です。

免責事項/Disclaimer

VMware様のスライドではお馴染みですね。こちらは必ずご一読ください。

おすすめのセッション

vSphere

VMware vSphere – What’s New and What’s Next

セッションリンク https://vmworld.jp/content/MC11130/

VMwareと言えばvSphere、という人は多いでしょう。やはりコアとなるvSphereの注目すべき機能と新バージョンについては物理サーバのサポートをしている人には響くものがあるでしょう。

Advanced Cross vCenter vMotionは、既によく知られた機能ではありますが、いくつかこの機能を紹介したブログを掲示しておきます。本セッション内の話もこの機能の図解があります。

“そもそもvMotionなんて、同じvCenter Server配下にホストを追加すればいいじゃない”という意見もあると思うのですが、インフラのマイグレーション(旧インフラのリタイアをし、新インフラに環境移行)のようなケースでは、旧vSphereから新vSphereを一時的に独立した形で建ててから移行をするケースも珍しくありません。

こうした背景としては、やはりVMware 互換性ガイドにて既存インフラが新バージョンのvSphereに対応しないがためにアップグレードが出来ない、というケースが多いでしょう。

ESXi Configuration EncryptionとvSphere Native Key Providerはセキュリティ関連の機能ですね。

  • ESXi Configuration Encryptionは、TPMを使用してESXiホストを保護する機能。TPMとESXiのセットが不一致になると起動時にPSODを発生させて不正な起動を保護する
  • vSphere Native Key Providerは、仮想マシンやvSANデータストアの暗号化に役に立ちます。
    これまではキー管理サーバ(KMS)を別途アプライアンスとして構成する必要がありましたが、マザーボード上のTPMを使用してこれらの暗号化を実行することが出来るようになりました。

物理サーバのマザーボード交換をした場合には、TPMチップも同時に交換されることがあります。
このような場合、ハードウェアの交換後にPSODが発生した、というシナリオは想定されるでしょう。
この際、マザーボード交換前の作業として、異なるTPMチップ環境で起動が出来るように”リカバリーキー”の確認とマザーボード交換後のESXi起動時に該当のリカバリーキーの入力を正しく行う事でESXiの起動が出来ます。ハードウェア保守の際に焦らないためには覚えてく必要がありますね。

※リカバリーキーの確認方法や本機能に関する詳細は、お手数ですがセッションスライドをダウンロードください。

さて、次期vSphereに関する情報は次の通りでした。

  • サポート対象外となる物理CPUの紹介
  • 今後はUEFI Boot利用が推奨となる(徐々にBIOSブート環境は廃止)
  • CIM Providerサポートの終了
    • Dell Technologiesで言えば、CIM Providerを使用したソフトウェアは”Dell EMC OpenManage Server Administrator”です。
    • 後継として、Daemon Softwre Development Kit(DSDK)が提供される。各ハードウェアベンダーも、これに対応する新規ソフトウェアを提供することに成るでしょう。
  • ESXiブートデバイスには、USBメモリスティックやSDカードは非サポートとなる

Dell Technologiesの場合は、”Boot Optimized Storage Solution”と言うM.2 SSDが使用出来ますので特にPowerEdgeユーザーの方は覚えておいて頂けると幸いです。

社内にヴイエムウェアサポートエンジニアが? VMware Skyline と 新登場 VMware Skyline Health Diagnostics の活用

セッションリンク https://vmworld.jp/content/MC11315/
こちらはオンデマンドセッションが公開済みですので、2021年11月末時点で直ぐに動画を閲覧出来ます。

テクニカルサポートの体制としては、直接お客様とコミュニケーションをするフロントライン エンジニアと、製品開発部門やサードパーティベンダーとやり取りをするエスカレーション エンジニアなど、内的にも組織が階層化されていることは珍しくありません。

フロントライン エンジニアがある程度技術的な調査をする組織の場合でも、技術的にわからないことがあればエスカレーション エンジニアに技術的な質問をするのは当然なのですが、日々こなす案件数が多ければ、エスカレーション エンジニアも直ぐに回答が出来るとは限りません。また、速さを求めれば精度が下がるリスクはあります。では、もしこのプロセスが自動化されたらどうなるでしょう?

VMwareでは、”VMware Skyline Health Diagnostics(以下SHD)”という機能を提供しており、一言で言えば自動ログ解析ツール、と言えるでしょう。SHDは仮想マシンアプライアンスとして構成が可能であり、要件は次の通りです。

私のTwitterを普段から見ていただいている方であれば、以前にも私が個人的にこの機能については紹介していたのをご存知だと思います。

機能の紹介動画はこちらにあります。

また、実際にSHDによってログを分析した結果はこちらにツイートしています。

VMwareユーザーならお馴染みの、あの紫の画面(PSOD)についても解析結果と対処を示してくれます。

ログ解析を人間で行う場合は、オペレーションやルールが徹底されていない限り属人的になりがちです。
特に組織規模が大きかったり、スキルレベルのむらが大きな組織であればあるほど、ミスの発生やそのためのフォローアップに時間が取られがちです。無駄を省いて、空いた時間を有効活用するという意味では、是非こうしたツールの採用を検討していただきたいものですね。

vSAN

VMware Cloud Foundation, VMware vSAN HCI インフラ設計 Deep Dive

セッションリンク https://vmworld.jp/content/MC11110/

VMware Japan シニア HCI スペシャリスト 川満 雄樹氏によるセッションです。
同氏は前職から長年vExpertとしても活動されており、プライベートなブログや数多くのコミュニティ上でのユーザー様への的確で無駄のない回答で活躍されており、ファンも多いです。(私もその一人です)

川満氏の活動されている領域についても掲示しておきます。

という前置きはあるのですが、今回も安定のクオリティでした。
川満氏のブログの、vSphere クラスタの鉄板構成・サイジングのポイント 2021 年版がベースになっているセッションですが、vSphereクラスタ、vSANクラスタ環境における、パフォーマンスを発揮するために必要なデザイン設計、正しい設定について学べるセッションです。vSphereやvSANの視点での話はもちろんながら、ハードウェアのBIOS設定やプロセッサ構成に至るまで、物理サーバのサポートをしている方にも大いに関係がある技術的な話が聞けます。

  • 物理サーバでESXiホストを運用管理しているが、自分の環境は最適な設定になっているか?
  • 仮想マシンのパフォーマンス性能で悩んでいるが、見直す所はないか?

まさにこんな方にとっては答え合わせが出来るようなセッションになっていると思います。最新のvSphere 7でなくとも適用出来る知識ですので、物理サーバと仮想マシン管理者は必見ですよ。

安定性と性能向上の鍵はアップグレード! あなたの知らない VMware vSAN の進化を徹底解説

セッションリンク https://vmworld.jp/content/MC11108/

VMware vSANは、更新適用をすることによって、運用管理性が楽になり、パフォーマンスも伸びるんですよっていうお話。

重要事項:本記事投稿時点では、VMware vSphere 7 Update 3は諸般の事情により一度ダウンロードサイトから削除されています。詳細については次の2つのURLをご確認ください。

なお、改めてvSphere 7 Update 3がリリースされた際にはこのセッションで紹介されているお話が現場でも活用出来る事となるでしょう。

読者様の中には”それならなんでVMworld Japanで、一度差し戻しになったバージョンの話を…”という方もいるだろうと思うのですが、VMworld Japanの1週間前の出来事ということもあり、セッション内容も固まっていたので、という大人の事情があるのだろうとお察しください。

vSAN 7 Update 3から使えるようになる機能にはこんなものがあります。

  • vSphere Clientからのクラスタ全体のシャットダウン操作
  • vSphere Lifecycle Managerによる、WitnessアプライアンスとNVMe ストレージデバイスの更新
  • 2 ノードvSAN環境での、RAID 1+1構成(ノード間でのRAID1とは別に、ノード内のディスクグループ間でのRAID1構成)
  • ストレッチ クラスタvSAN環境での、1サイト障害+ウィットネス障害時でのワークロード保護

特にクラスタ全体のシャットダウンについてはこちらに具体的な操作手順が紹介されています。

https://youtu.be/Z8wZ6_W6m8w

パフォーマンス面では、vSAN 7からは内部の動作アルゴリズムを改善させたことで、同じハードウェアを使用した状態でも大幅にパフォーマンスが向上するケースもあるとのことです。セッションスライド内ではより具体的なテスト結果が閲覧可能です。

最後に、vSAN環境を更新する際のツールとしては、vSphere 7から登場した”vSphere Lifecycle Manager”を使用した更新について紹介されています。このツールはvCenter Server内部にはじめから組み込まれており、vCenter Server利用者であれば誰でも利用が可能なものです。

また、ハードウェアベンダーが提供している”ハードウェア サポート マネージャ(HSM)”を構成済みの環境であれば、BIOSやリモート管理アダプタ、HDDやSSDなどのハードウェア更新も一緒に、vSphere Lifecycle Managerから実行が出来ます。

Dell Technologiesの場合は、”OpenManage Integration for VMware vCenter”というソフトウェアのことであり、これは仮想マシンアプライアンスとして提供されています。

これらに関する情報は次の記事が有効です。

vCenterからハードウェアもまとめて管理!OMIVV応用編②(vLCM)- Dell Technologies 情報ガイドステーション

https://www.youtube.com/watch?v=Qu-K45YIvtE

NSX

VMware NSX-T Data Center の進化;2021 年度版

セッションリンク https://vmworld.jp/content/NW11171/

間もなく登場となるVMware NSX Data Center 3.2でどのような機能が実装されるかを先取り出来るセッションです。いよいよVMware NSX-Vのリタイアも目前と迫り、市場でも徐々にNSX-Tの浸透が進みつつあります。今回のバージョンアップでは、より一層セキュリティに関する機能拡張が中心となっています。

上記リンクからは一部の目玉機能について図解も含めた紹介があります。

  • vSphere Clientに統合されたNSX-Tのユーザーインターフェイス
  • マルウェア検知
  • URLフィルタリング
  • Network Detection and Response (NDR) による不正通信の検出

個人的な感想としましては、論理スイッチや分散ルーティングなどのネットワーク接続性に関する機能はほぼ成熟したのかな?という印象であります。

VMware NSX Data Center for vSphere から VMware NSX-T Data Center への移行

セッションリンク https://vmworld.jp/content/NW11175/

上記でも触れましたが、VMware NSX Datacenter for vSphere(NSX-V)は6.4を最後として提供が終了される予定です。General Supportフェーズは後数ヶ月で終了です。

この事を念頭に置くと既存のNSX-V環境ユーザーは、NSX-Tへのマイグレーションを検討する必要が出てきます。なお、VMware NSX DatacenterのライセンスはVもTも共通をしています。

移行のパターンはシナリオごとに作業が別れます。

サポートの方も、”移行はどのように行うのか?”、”手順はどこに載っているのか?”、”移行できない機能はあるのか?”という質問を頂くことでしょう。そんなケースにも備えて、事前学習をされておくと良いでしょう。

最後に

ダイジェストとしつつも、1つ1つに対してコメントを入れているとやや長めの記事になってしまいました。

本当ならばもう少しいろんな記事を紹介したい所ではありますが、皆様のニーズも様々だと思いますので、まずは上記の中のいずれかをご覧頂いてから、後は是非VMworld Japanのページ上で気になるセッションを探して見てください。

最後に、セッションのスライドをダウンロードされますとポイントが加算され、100ポイントごとにVMworld チャレンジに応募が出来ます。2021年12月24日17時までなら応募が出来るようですので、是非奮ってご参加をされるといいでしょう。

 

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