L2延伸とは、L2延伸のメリット、必要性に迫る(VMware NSX VXLAN, サイト間接続)

VMware NSXを語る上で、VXLANという機能は”L2延伸”や”拠点間L2接続”などの目的で登場します。(勿論VMware NSXにおけるL2機能の利点はこれだけではありませんが)

 

例えば、VXLANを利用することで拠点間での仮想マシンのvMotionを行う際に、通常であればサイト毎にIPアドレッシングが異なる場合があるが、VXLANを利用することで、サイト間接続時もIPアドレスを変更せずとも、シームレスな移行が可能となります。

 

この様に上記で、拠点間での通信を例に挙げられてもなかなかピンと来ないケースもありますので、段階を追って説明をしたいと思います。

まず、1つ目の例です。

f:id:instructor8010:20180423204744p:plain

ケース1:1つのスイッチに2つの端末が接続された例(同一サブネット)

この例では、Host1と2は相互にPingコマンドによる応答性があると言えます。
結論:同一のIPサブネットは、L2ネットワーク上で構成することが出来る。

 

続いて2つ目のケースです

f:id:instructor8010:20180423205108p:plain

ケース2:1つのスイッチに2つの端末が接続された例(異なるサブネット)

この例では、Host1と2は相互にPingコマンドによる応答性が無いと言えます。
結論:異なるIPサブネットによる疎通環境は、L2ネットワーク上で構成することが出来ない。 

 

3つ目のケースです

f:id:instructor8010:20180423205555p:plain

ケース3:1つのルーターに2つの端末が接続された例(異なるサブネット)

一般的には、ルーターに対して直接エンドデバイスが接続されるケースは少ないかと思いますが、異なるIPサブネット間の通信は、”ルーティング”が実行されることにより実現されます。

結論:異なるIPサブネット上にあるデバイス間での通信には、必ずルーターが必要である。

 

ここまでの話を整理すると次の通りです。

  • 同一のL2スイッチ上に存在するデバイス達は、同じIPサブネットに属している事で通信が相互に可能である。
  • 言い換えれば、各デバイス達を同一のIPサブネットに属するようにするには、同一のL2ネットワークを形成する必要がある。
  • 異なるIPサブネットに属するデバイス間の通信には”ルーター”が必要である。
  • 言い換えれば、ルーターは、複数のIPサブネットに属しているとも言える。

これらの事実は、VMware NSXに関係なく一般的な話であると言える。

 

これらを踏まえると次のような環境はどうだろうか?

f:id:instructor8010:20180423210909p:plain

Quiz:どのようなデバイスが?に入れば、サイト間通信が出来るでしょうか

Site AとSite Bは、異なるサブネットを持っているワケですから、正解は”ルーター”ですよね。

f:id:instructor8010:20180423211152p:plain

異なるIPアドレスを持つ環境同士を繋ぐには、ルーターが必要ですよね!

さて、ここで仮想環境ならではの状況を考えて見ましょう。

“vSphere vMotion”による仮想マシンのサイト間移動が発生したとします。

f:id:instructor8010:20180423211514p:plain

果たして、仮想マシンHost1は、Host 3やHost 4と通信が出来るでしょうか?

これまでの点を踏まえますと、Site B内の状況は、以下の状況が置きていると言えます。

f:id:instructor8010:20180423205108p:plain

再掲:異なるIPサブネットのデバイス同士は、同一スイッチ上で相互通信は出来ません

こうなってしまっては、手動でHost1のIPアドレスを変更してやるか、他のHostのIPアドレスを全て変更するなど手動での作業が余儀なくされます。

 

つまり次のように、マニュアルでのIPアドレス変更によりサイト間以降後のサービス継続性が約束されると言えます。

f:id:instructor8010:20180423211909p:plain

手動でのIPアドレス変更後に、ようやくサービス提供が可能と言えます

しかし、毎回手動でIPアドレスの変更をするというのは、管理工数の増大や作業ミスなど多くのリスクがあると言えます。

実際には有りえませんが、物理サイト間に跨るような巨大なスイッチでもあれば、次のようなことも出来ると言えます。

f:id:instructor8010:20180423212422p:plain

現実には有りえませんが、サイト間に跨るL2スイッチでもあれば…

さて、ということで、巨大なネットワークスイッチというのはどこにも売っていないわけですが、物理的に巨大なスイッチに拘りさえしなければ、現実には次のような手法があると言えます。

本記事では、ここまでの内容の締めとしまして、次の通りです。

1. vSphere vMotionによるサイト間移動後には、サイト間で異なるIPサブネットを利用している場合、仮想マシン移動後に手動でIPアドレスの変更が必要なケースがある

2. もし、L2延伸ネットワークを持った環境で、サイト間の仮想マシン移動を行った場合はIPアドレスの変更なく、シームレスな仮想マシンの移動(場合によってはサイト間フェイルオーバーかもしれない)が出来ると言える

 

vSphereの登場により”vMotion”による仮想マシンの可搬性がメジャーとなり、

vSphere 6.0より”複数のTCP/IPスタック”と”Long Distance vMotion”のサポートに伴い、サイト間移行にもvSphere vMotionが利用出来る今だからこそ、L2延伸がなぜ必要であるか、という点にフォーカスしてみました。

コメント