vSphere 7 アップグレード計画ガイド
本ガイドは、2020年前半にGeneral Availability予定のvSphere 7へのアップグレード(既存のシステムのバージョンアップ)に際して、どのような点に注意すべきか、どのようにアップグレードを計画していくかの計画を立てやすくするために事前情報をまとめたものです。
免責事項
本記事ではあらゆる利用者の環境を想定することは難しいため、極めて一般的な環境をベースに想定しうる項目について言及致します。また、現在はvSphere 7のドキュメントや公式情報が出ていないため、アップグレード計画をし易くするために参考として6.7を中心とした情報を掲示しております。
VMwareから次のような公式情報が公開されましたら、そちらを優先参照してください。
VMwareから次の情報が公開されましたので、リンクを追加します。
繰り返しとなりますが、本投稿は製品の一般公開前の情報記事でありますので、本記事では取り扱っていない未知の情報などが、更新手順の計画などで発生しうる可能性もあります。
また、この記事だけでアップグレード計画を行わないようお願い致します。(VMware製品だけではなく、各種ハードウェアベンダーごとに固有の設定や確認事項もありうるため)
本記事を参考にしたことにより、本番環境に予期しない事象が発生した場合などは一切の責任を負いかねますことをご了解の上記事を参照ください。
vCenter Server
vCenter Serverは、vSphereの管理プレーンであり、また現在ではクラウドとの接続ポイントのような役割も兼ねるほどになりました。
そんなvCenter Serverですが、vSphere 7からはvCenerの展開デザインについて重要な変更点があります。
- Windows版vCenter Serverの廃止
blogs.vmware.com - 外付けPlatform Service Controllerの廃止
blogs.vmware.com - Adobe Flash対応の”vSphere Web Client”の廃止
これらを総合的に見ると、vSphere 7からサポートされるvCenter Serverは次のようになります。
- Linux アプライアンス版のみ
- 仮想マシンベースのみ
- 組み込みPlatform Service Controller構成のみ
- データベースはPostgreのみ
新規でvCenter Serverを展開するユーザーの場合
展開形式については上述の通りとてもシンプルです。基本的には展開におけるシステム要件を守るということにフォーカスすればよいでしょう。
なおWindowsベースのvCenter Serverの選択肢がとれた時代は、次のような理由でWindows版vCenter Serverが選ばれていました。
- 社内にWindows Serverに強いエンジニアがいる
- 既にWindows Serverのライセンスを持っている
- 社内のバックアップソフトウェアがWindows対応である
- vCenter ServerのデータベースにMicrosoft SQLを使いたい
言い換えれば、vSphere 7からは上記のような理由でWindows版のvCenter Serverが選択出来ませんので、ご注意ください。
既存のvCenter Serverを保持しているユーザーの場合(組み込みPSC)
既存のvCenter Serverが組み込みPSCを搭載している場合は、基本的にそれをそのまま利用する形になると予想できます。(もちろんvCenter Server 7.0のリリースノート公開後、アップグレードパスがあることを確認する必要があります)
vCenter ServerがWindows版の場合
Windows版vCenter Serverは、”マイグレーション”というオペレーションを行うことで、Windows版からAppliance版に移行が可能です。(vSphere 6.5/6.7が本オペレーションが可能です)
なお、これまでの流れで言えば、vSphere 7.0のインストールイメージを入手後、それをマウントしてインストーラーを起動します。その画面内で”Migrate”というボタンから移行が可能になると予想できます。
この機能を使いたい場合かつ既存vCenter Serverが6.5未満の際、まずは6.5以上へのアップグレードを行う必要があります。
vCenter ServerがAppliance版の場合
この場合は、単純に既存のVCSAを7.0にアップグレードすればOKです。
ただこの点についても公式のアップグレードパスや手法をぜひ参照しましょう。
こちらはvSphere 6.5から6.7へ更新する際の手順についての公式情報です。
既存のvCenter Serverを保持しているユーザーの場合(外付けPSC)
ここでよくあがるであろう質問は、”既に外付けPSCを運用している利用者はどうすればいいか?”
このシナリオについては、”Convergence tool“がvSphere 6.7 U1以降用意されています。
[VMware] 外部PSCをEmbedded PSCに戻そう
vCenter ServerがWindows版の場合
上記で紹介しております”Convergence tool”を使うためには、事前にvCenter ServerのOSをWindowsからPhoton OSに移行しておく必要があります。
上記項目でも紹介しておりますが、以下の手順で事前に移行を終えておきましょう。
vCenter ServerがAppliance版の場合
vCenter Serverが既にApplianceの場合は、そのまま”Convergence tool”が使えます。なお、再掲ですがvSphere 6.5または6.7以上のVCSAが対象です。
追記:外部PSCは、アップグレードプロセスの際に自動的に組み込みPSCに変換される?
以下の動画の2:05のタイミングからの紹介です。
アップグレードのプロセスの際に自動的に外部PSCを内部PSCに変換してくれるようなコメントが見受けられます。
2:15-2:21の解説が次の通りです。
When upgrading if the SSO domain iculudes any external PSCs the vCenter Server Upgrade will converge those PSCs to an embedded vCenter Server during that process.
今翻訳精度の高さに定評がありますDeepL翻訳で見ても次の通りです。
なるほど。これが本当なら手動でコマンド操作をしなくてもよいので利用者はとても楽ですね。
仮想マシンとvSphereの互換性
自社で保有しているサーバー、ストレージ、IOカード、仮想マシンとの互換性確認には”VMware 互換性ガイド”が利用出来ます。VMware Compatibility Guide
以下の赤枠箇所にマウスを載せてもらうと、様々な観点での互換性を確認することが出来ます。
- IO Devices
NICやストレージアダプターの互換性及び動作がサポートされるドライバーやファームウェアの組み合わせを確認出来ます。 - Guest OS
仮想マシンの種類によってはハイパーバイザーとゲストOS間の互換性を確認する必要があります。
VMwareネイティブ製品との互換性
例えば、”VMware NSX-T”と”vSphere”との互換性など、VMware製品間での互換性の確認は必要です。
これを検索したい場合には、”VMware Product Interoperability Matrices“が利用出来ます。
下図では、”vCenter Server”と”NSX-T”との間でのサポートされる組み合わせセットを検索している図です。
こちらが出力結果です。本記事投稿時点ではvSphere 7に関する情報は限定的であるため、まだvSphere 7自体の情報掲示はありませんが、縦横で各ソフトウェアを確認して、緑チェックで重なる所はサポート構成となります。
サードパーティー製品との互換性
VMware vSANやNSXなどのVMwareネイティブな製品以外にも、バックアップ製品のようなサードパーティ製品をご利用のユーザーは、その製品とvSphere 7との互換性も確認しておきましょう。
もし既存のバックアップソフトウェアが、vSphere 7をサポートするという記述が無い場合でトラブルが起きた際には、問題に対してのサポートを受けられない可能性が出るからです。
無計画であったり、準備不足のアップデートは、必要なサポートを受けられないという不測の事態を招く可能性があります。
まずは自社内でご利用されているソフトウェアを列挙する、ということもアップデート計画の際に必ず行いましょう。
例:Dell EMC Avamarの場合
AvamarはDell EMCが提供しているバックアップソフトウェアであり、EOAが宣言されている”vSphere Data Protection”と同じエンジンを搭載しているソリューションです。
Dell EMC Avamar Data Protectionソフトウェア
下図内の赤枠内では、本バックアップ製品がサポートするハイパーバイザーの名称記載があります。
しかし具体的なバージョンまでは記載がありません。
AvamarがサポートをするvSphereの具体的なバージョンについては下図内の青枠内のリンクから互換性確認ページへ移動が出来ます。
以下のページが、”Avamar互換性と相互運用性マトリックス”です。本ページでは、Avamar以外のデータプロテクションソリューションについての互換性も確認可能です。
- 左側のリストから、検索したいAvamarのソフトウェアバージョンを選択します。
- 右側のページで、ハイパーバイザーの種別を選択後、”Generate Report”をクリックします。
上記の操作の結果、以下のように結果が出力されます。
下図ではAvamar 18.1がサポートをするvSphereのバージョンが表示されています。
例:Veeam Backup & Replicationの場合
Veeamは、今バックアップソフトウェア業界の中では大変有名なベンダーです。
私も昨年Veeam Forumというイベントに参加を致しましたが、イベントの規模は内容からも、大変な勢いを感じました。
今回はVeeam社の中でも”Backup & Replication”というソフトウェアについて取り上げます。こちらのソフトウェアのシステム要件リンクはこちらです。
下図をご覧頂きますと、VMware プラットフォームの箇所に現在vSphere 6.xと5.5の記述が見られます。
このように、ソフトウェアに対して特定のバージョンの製品をサポートしているかどうかが確認できます。
上図だけでは、vCenter ServerやESXiなどの細かなバージョンまでは確認が出来ません。
そこで上図内では、詳細については最新のリリースノートを参照するようにという記載もあります。
リリースノートを見ることで、ESXiやvCenter Serverのバージョン指定を確認することが出来ました。
Veeam Backup & Replication 10 Release Notes
以上です。今回はVeeam社の製品をベースにご紹介しましたが、他のバックアップ製品並びにそれ以外の製品でも応用できる検索スキルですので、ぜひリリースノートを見るということを心がけましょう。
付録:Dell EMC PowerEdgeに対してアップグレードを行う場合
Dell EMCでは、サポートサイトにて以下のようにvSphereの世代ごとのページが用意されており、ページ内では各種PDFガイドにアクセスが可能となっています。Dell EMC – VMware ESXi 7.x
中でも、VMware vSphere 7.x on Dell EMC PowerEdge Servers Release Notesは重要な情報も多いですので、作業前にご確認頂くようお願い致します。
付録:vSphere Upgrade Planning Sheet
本項目で取り扱った内容について、ご自身の環境と照合する際のまとめに使えるシートを作成してみました。もちろん利用者の環境次第では、以下で示す内容だけでは評価項目が足りない場合がありますので、不足分は管理者様にて管理されている環境に応じて追加の上環境のアップグレード計画を立てましょう。
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